足音がする。
ててて、と翔ける音は幼い子供のようだ。すぐそばではない。でも、確かに聞こえる。
そんな不思議な存在が、昔から我が家にはいた。
「座敷童ってやつ?」
「宝くじに当たったことはないけどね」
お茶を飲む。彼も飲む。机の上にはお菓子の集まりが三つ。
「で、これも座敷童用のか?」
「ご家庭ローカルルールってやつね」
ぴり、とお菓子を開けて食べる。彼も食べる。残る集まりの中からクッキーの小袋を開けてやった。
「相変わらず摩訶不思議ハウスだよな」
「同級生の悪ガキにカンタの真似っ子をよくされた」
おまえんち、おっばけやーしきー
幼い頃、そう言われて怒って殴り込みに行き、逆に親が彼らに頭を下げたのは今でも覚えている。悔しくて仕方なかったが、押し入れに閉じこもっていたらぱらぱらとお菓子が降ってきたのを見て、自分は間違ってなかったと思えたんだった。同級生はそのあとなぜか高熱を出したらしい。復帰した後謝ってきた。
「お、減ってる」
いつの間にか先ほどあけたクッキーが半分ほどになっている。彼は全く焦りもせずにもうひとつのクッキーをあけた。そっちはチョコ味だ。
「こっちも美味いぞ〜」
「餌付けしないで?」
彼と続いているのは、こういうところがあるからかもしない。クスクス、と笑う声がどこからか聞こえた。
【遠い足音】
10/3/2025, 10:08:23 AM