未知亜

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 大通りに出ると足元でイチョウの葉がカサカサ鳴った。立ち止まったら、つないでいた手がピンと伸びてあなたが振り向く。
「どうしたの?」
 答えの代わりに、折り重なる黄色をつま先で弾く。地上数センチで大小さまざまな葉っぱが小さく舞った。
 あなたがなにかつぶやいた気がして、私はその顔を見上げる。前にもこんなことあったなと思う。
「なに?」
 今度は私が尋ねたけど、あなたは笑ってそっと私の手を引いた。すべて肯定してくれるようなその笑顔に果てしない安心を覚える。
 よく晴れたイチョウ並木を、私たちは駅に向かってまた歩き出す。

 久しぶりに見たおじいちゃんの夢だった。記憶よりずっと若かったけど、おじいちゃんだとすぐわかった。
 戦争の話、昔の旅の写真、紺色の箱の煙草と、ドーナツ型に吐かれた煙。覚えているのはそんなことだ。肺を患って長期入院した挙句、秋の朝に静かな終わりを迎えた、おじいちゃんの旅路。
 窓を開けて空を見上げ、私は心でつぶやいてみる。
 また夢に遊びにきてね。おじいちゃんとあの電車に乗って、心の旅路を一緒にたどってみたいから。

『心の旅路』『静かな終わり』

12/30/2025, 9:53:14 AM