ストック1

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「青い風を表現してみてくれ
ただし絵の場合、青色は使ってはいけないよ
言葉でも、直接風の色が青色をしていると説明するのもダメだ
青いものを挙げて、それと同じ色をした風だと言うのも、もちろんアウトだからね」

伯父がなんか思いつきを口にした
ここが芸術大学とか、そういうところならわかるんだけど、僕たちは芸術とは縁がないし、今はこの人の提案でババ抜きをしている
ババ抜き中に何を言っているのか
周りの友人たちはハァ?みたいな顔をしている
僕もしている
この人はたまに僕たちにわけのわからないことをさせたがる
そしてなんだかんだ、最初こそ不満だが結局僕たちは楽しんでしまうのだ
それがよくない
伯父は味をしめてまた変なことを言い出すのだ
つまり、楽しんでしまう僕たちも悪い
ある意味自業自得だ
で、何?
直接色が青いと描かず、言わず、青い風を表現?
残念ながら僕は今の時間で思いついてしまったよ
絵ではなく、文章で攻める
風の色が青色であると言わずに青い風を表現してみせよう


その北風は若く、うまく吹くことができなかった
落ち込む若い北風に、先輩の北風は言った

「お前はまだ経験の浅い青二才だ
これでうまく吹けたら天才どころの騒ぎじゃない
だからまだまだ若くて青い風のお前は、落ち込まなくていい
努力を続ければいつか上手く吹けるようになるさ」

若い北風は先輩の言葉に励まされ、より一層やる気を出したのだった


とかどうだろう
色が青い、ではなく、未熟という意味の青を使い、青い風を表現してみた

「あー、なるほど」

友達たちはちょっと感心してくれてる
さて、伯父は?

「いやあ、風を擬人化したか
なかなかロマンチストだね」

ロマンチックかな、これ?
ロマンチック要素はないような

「君はこういうファンタジーなことをけっこう言うね
私は君のそういう発想、好きなんだよね」

評価してくれるのは悪い気しないな
あまりこういうもので褒められる機会ないし

「いやいや、おかげで満足できたよ
青は確かに、未熟って意味もあるもんね
うまいぐあいに風を青くしたね」

伯父は言葉通り満足げだ

「よかったら君たちも作ってみてね」

伯父はまだ考えついていない友達にも、引き続け考えることを勧めた
僕も他の二人がどう表現するのか気になる
やるかどうかはわからないけど、楽しみにしておこう
そんなことを考えていると伯父がトランプを集め始めた

「満足できたし、とりあえず今度はジジ抜きをしよう」

本当にこの人はマイペースだな

7/4/2025, 11:26:54 AM