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ひとりきり

あなたが私の部屋にやって来るのは、いつも深夜。予告なんてなし。ちょうど私が寝入る直前、ほんの少しの隙を狙うようにして、あなたはやって来る。
あなたは当然のように私のベッドの中に滑り込む。
「天国みたいに温かい」
ようやく満たされた──そんな風に聞こえて、私はため息をつく。 

「あなただけは何処にも行かないでね。あなたがいなくなったら私、本当にひとりきりになっちゃう。そしたらもう、生きていけないよ」

このセリフを言う時、あなたはいつも枕に顔を押し付けて弱々しく笑ってみせる。表情もセリフも芝居がかっていて、もはや冷笑する気にさえならない。

次の日の朝、通知が来たあなたは急いで着替えて髪の毛を整える。私がシーツに残ったあなたの匂いに埋もれてる間に、あなたはドアを閉めて男の人のところへ行く。あなたにとって私をひとりきりにすることは、息をすることのように簡単らしい。


9/12/2025, 5:06:18 AM