目に見えないものばかりだ。季節はいつの間にか移ろうし、気圧なんかに気持ちが左右される。大切だったものはなにもかも、目に見えないところへ逃げていく。
1時間かけて巻いた髪を風に攫われる。どこに逃げたって、不自然なアイロンの熱を冷ますような、秋のにおいがする。
目に見えないものなんかに掬われたくない。落ち葉を風がくすぐって、舞い上がる。そうしてまた落ちる。
目に見えないものに左右されて、ただ生きてるだけが悲しい。心の質量が大きすぎて、目に見えないものをひとつも信じられなかった。
秋風と冬のそれを切り分けられるようになったら、18年引きずった愛おしくて重たい体を預けよう。いつか燃え尽きる日、灰になって風に乗って、目に見えないくらい細かくなれたら。その日はたぶん、死ぬのにちょうどいい。
/秋風
11/14/2024, 1:58:59 PM