霜月 朔(創作)

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やさしくしないで



やさしくしないで。
そんな痛みの滲む声で、
私の名前を呼ばないで。
触れられない温もりを、
手のひらに探してしまうから。

夜の隙間に落ちる度、
君の記憶をなぞるけれど、
指先は悴んで、
愛し方さえ、忘れてしまった。

もう、君が、
私を愛していない事は、
分かっているのに。
君の哀しい瞳を見たら、
「戻ってきて」と、
言ってしまいそうになる。

私はまだ、君の影を踏んで、
冷えた指で時間を数える。
忘れられるなら、忘れたいのに。
それさえ、出来なくて。

だから。
やさしくしないで。
私を置いていくなら、
痛みさえ残さずに、
ちゃんと…突き放して。

2/4/2025, 9:08:52 AM