くり

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席替えの時、窓側になると宝くじの高額当選をしたのかという程、喜んだ。

私は進学クラスで他のクラスよりも授業が1コマが多く、7時間目は大学の受験勉強に勤しんでいた。集中力なんて続くわけもなく、授業中は窓の外を眺めていることが多かった。

あの子が居たから。
サッカー部員のあの子。

教室の窓から見える景色は、ドキドキでいっぱい。
耳を澄ませば声まで聞こえる。
あの子は部活を頑張っている。
私も勉強を頑張らなければ。
そう思いながら、集中するのは窓の外。
人が恋しくなる季節のほのかな恋。
ただ遠くで見ているだけで満足していた
うぶな恋だった。

大学には無事に合格し、あの子とは別々の道を歩むことになったけれど、今でも窓から外の景色を眺めると、あの子がボールを追い掛けている。

9/25/2023, 11:40:26 PM