「あぁ〜酔った酔ったあ〜〜いや〜酔ってなあぁい〜」
私は今最高に最低な気分だ。
彼氏に振られただけではなく、コロナによる人件費削減のため
バイトをクビになった。
友達と飲み明かしたかったが、初めての緊急事態宣言により
ことごとく断られてしまった。
彼との思い出が詰まった部屋にいたくなくて、夜に近所の公園でひとりお酒を飲む。
「ふざっけんなよ…アイツも、店長も、コロナもおお〜!」
手を思いっきり上に上げて、公園のゴミ箱に向かって空になった酒缶を投げつける。
カッシャアアン!という音が誰もいない深夜の公園に響き渡った。
「うっさくて〜ごめんねえ〜!」
と言ってから
「あぁ、1人やったわ!」と言いケタケタと笑ってしまった。
ふと視線が遊具に向かう。
ブランコに滑り台、鉄棒に……ジャングルジム。
何だか無性に登りたくなった。1番上に行きたかった。
「よっしゃ!」
飲みかけの缶を勢いよくベンチに置き、ジャングルジムへと向かう。
落ちた時のことなど、酔っ払いは考えるわけが無い。
ヒヤリと冷たい棒を掴み、ヨタヨタと登っていく。
酔っ払いとはいえ大人である。すんなりてっぺんに着いた。
びゅうっと頬を風が撫でる。
「なんだ、意外と低いなあ…」
ちょっとガッカリした。登っても真っ暗だ。
何故か脳内で登ったら綺麗な夜景が…なんて考えてしまっていた。
「見えるわけないじゃんねぇ?」
と自分にツッコミを入れ、またケタケタと笑う。
「――っはぁ〜、おっかしい……」
おかしい。ほんとにおかしい。
登っても夜景など見えるはずもない。
なんで登ったら思った通りに夜景が見えるなんて考えたのだろうか。
気づけばまぶたが涙でいっぱいになっていた。
滲んだ景色の中で、電柱に付いている電灯や、近所のアパートの部屋から漏れる光がキラキラと輝いた。
『あぁ、夜景、見れたや…』
理想とはかけ離れた理不尽の中で、私は生きていかなければならない。
でも、理不尽だらけの世界の中で
自分の理想が少し叶ったような気がして、
幸せな気持ちになった。
不幸だ不幸だコノヤロウ。の後に、
「でも!」
が言えるような生活にしていこう。
まずは、こうだ。
彼氏にフラれ仕事もクビになった。
でも!
そのおかげでジャングルジムから幸せをもらった。
そして酒は美味い。
ケタケタと笑いながら、ぴょんと飛び降りた。
――――足をくじいたのは、言うまでもない。
【ジャングルジム】~完~
フィクションです!
酔ってる時に遊具で遊ぶのはやめましょう!笑
いつも♡︎ありがとうございますm(_ _)m
私もポチポチ♡︎送ってるのですが、他の方の小説も面白いし、
ポエムも素敵です!
数行でお題を表現するその表現力が私も欲しい…( ´ー`)
9/23/2022, 1:13:41 PM