はじめ

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薄暗い場所に一人立つ。床は固く、天井は高く、手を伸ばしても届かない。
目の前は分厚い布だ。その向こう側、ざわざわと声が聞こえる。わずかに差し込む、光。
右を見て、左を見ると、仲間がこっちを見ているのが分かる。この薄暗い中でも、私の動きを心配して、そして期待していることが、はっきりと伝わってくる。
ああ。
(わくわくしてきたー!)
客電が消え、アナウンスが流れ、その後目の前の緞帳が上がる。高い高い天井から、私へと光が降ってくる。
その時、客が見るのは私だ。
私を、見て、期待して、そして、
「ふふ」
口の中、すぐ隣に誰かいなければ聞こえないぐらいの小さい声で微笑んで、そして袖に立つ仲間達に頷いてみせる。
さあ、始まりだ。胸を張り、真っ直ぐ立つ。
ブー、と劇場に開始のブザーが鳴り響く。

3/20/2024, 9:08:40 AM