とある恋人たちの日常。

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 彼から運転を教えてもらった。
 それをしっかり吸収する。
 私は彼から教えてもらったものを、なにひとつも無駄にしたくない。
 
 走る車両のスピードが上がると、森林を抜け視界が広がる。木々の影から光が差し込んだ。
 
「ふわっ……!」
 
 道路の端に車を停めて、その光景に目を奪われた。
 青の中に桃色の花びらが舞い踊って、溶け込んで一枚絵のようだった。
 春を身体に感じられる。
 
 練習していたからこそ、見られた景色に胸と目が熱いものが込み上げた。
 
 深呼吸をすると優しい花の香りと、少し前の森の香りが混ざり合う。
 
「春だぁ……」
 
 今度、こんな景色を見た。
 そう彼に伝えよう。
 
 私はもう一度深呼吸して練習に戻った。
 
 
 
おわり
 
 
 
三一五、春爛漫

3/27/2025, 1:52:19 PM