「はぁー」
仕事から帰宅して、カバンを放り出し、コートを脱ぎ捨てる。
それから、私はソファーに座ってクッションを抱えていた。
「失敗、しちゃったなぁ」
注文書の個数を間違えて記入しちゃった。
上司にガミガミ20分怒られて今ヘコミ中。
はぁぁぁぁ
久しぶりにやっちゃったなぁ
重いため息をついてしばらく動けない私。
彼氏に「仕事で失敗しちゃったよ〜(;_;)」とメールするとそのままグタッと手を降ろす。
お風呂、、、入らなきゃ、化粧も落として、、、
鈍った頭でようやく考えると、鉛のように重い体を動かす。
浴室に向かう途中で、足元にあるダンボールに目が入る。
実家から送られてきた野菜やお米。
その上にゆずが何個か置いてあった。
あ、ゆず湯にしよう
実家で冬になるとお母さんがやってくれてた。
お風呂を沸かしてゆずを浮かべ、ほんのり香る落ち着く匂いをまとった湯船に浸かる。
あああああ、きもちいーーーー
ふうううぅと、深いため息が出る。
体の隅々にゆずの香りが行き渡っているような気がした。
目を開くと、湯気に包まれた浴室で、湯船に浮かんでいるゆずをすくい上げる。
大丈夫
自分に言い聞かせる
大丈夫、あなたはよくやってる
ゆずの香りを吸い込むと、甘酸っぱい香りが私の気持ちを落ち着かせてくれる。
明日になればきっともっと大丈夫になる。
そう思いながら、癒やされた気持ちでお風呂を上がる。
ふと気づくとメールの着信音
「元気出せよ!俺はいつでも味方だから。週末、愚痴ならいくらでも聞くぞ」
彼のメールに思わず微笑む
「ありがとう、元気出た!」
そう返信して髪を乾かしベッドへ倒れ込む。
ほのかに香るゆずの香りがいつまでも私を優しく包んでいた。
12/22/2023, 12:02:01 PM