やまんば

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「僕が勇者にしてあげるから」
 彼はそう言った。僕は首を横に振った。もう一緒に冒険は行かないよ。
「一番高い武器買ってあげる。ずっと酒場にいていいし、宿では一番いいベッドでねていい、だからお願い」
 様々な条件が僕の前に現れる。それでもぼくは首を横に振った。

「もう決めたんだ。ごめんね」
 彼の治癒力は素晴らしいものだと知っている。
仲間になりたいと思った。仲間になって魔物を倒して、世界を救いたいと思った。この人とならできると思った。それでも、僕は勇者になれなかった。
 仲間になりたくて、でも仲間になれなくて、僕はこの足で村を出た。泣きたい気分だった。
 もっと君にホイミしてもらいたかったよ。もっも君の呪文を聞きたかったよ。
 でもね、君といると、勇者になれなかった自分の存在価値を考えてしまうんだ。君に劣る僕を、僕は見てられないんだよ。ごめんね、自分勝手で。君なら魔物を倒せるよ、凡人の僕だけどそれだけは祈らせてよ。

/仲間になれなくて

9/8/2025, 2:45:32 PM