『こんな夢を見た』
寒い冬の朝。歩く度に巻いてるマフラーから彼女の真っ赤な鼻が見え隠れしている。
朝起きたての彼女から「肉まん食べたい」というオファー?を受けた俺は家から15分のコンビニに彼女と一緒に向かっていた。
近道である公園を通り抜けると町を一望できる長い階段が現れた。数歩先を歩いていた彼女が突然振り返り無言で手を差し出してきた。マフラーから少し見える彼女の頬は少し赤らんでいる。
俺は黙ってその手をぎゅっと握った。冷たくて暖かい彼女の手。
ふふっと笑うと、彼女は眉を少しだけひそめてぷいっとそっぽを向いてしまった。でも握る手を離さないそんな彼女にまた笑みがこぼれた。
─────
俺の腕の中にいる彼女は今にも息絶えそうにしていた。背中から溢れる赤い血がタイル張りの床に流れていく。
「な、なんでこんな事に…」
それは一瞬の出来事だった。
駅のホームで彼女と一緒に電車を待っていた。電車が到着してドアが開く寸前隣にいる彼女から「ゔっ」という声が聞こえた。振り返ると彼女は驚いた顔をして立ち止まっていた。心配して近づくと彼女の白いコートの背中部分に赤いシミが滲んでいた。倒れ込む彼女を慌てて受け止める俺に目もくれず黒いフードを被った男が電車に乗っていきドアが閉まる瞬間乗客であろう女性の悲鳴が聞こえた。
みるみるうちに彼女の顔色が悪くなっていく。
「今救急車呼びましたから!」
駅員の言葉に俺は安心などできなかった。
床に広がっていく血。あんなに荒かった息が静かになっていく。最悪な考えがよぎって何も言葉が出ないそんな俺に彼女が手を伸ばす。その手に気づいた俺は強く握った。
今にも瞼が閉じそうな目で俺を見つめる彼女。
「ご…めん…ね…」
そう言って彼女の目が閉じて彼女の身体が脱力したのが分かった。
心臓がバクバク音を立てる。喉がぎゅっと締まり徐々に視界の際が黒くなっていき瞬きを一度したら目の前が真っ暗になった。
────
声にもならない声を上げながら飛び起きた俺は周りを見渡す。いつもの寝室に隣には彼女の枕がある。
「夢…?」
額にかいた寝汗とは思えない程の汗を手で拭っていると寝室の扉が開いた。
「大きな声出してどうしたの?」
寝ぐせをつけた彼女がそこにいた。慌てて彼女を抱き寄せる。
「急になによ?!」
怪訝そうな言葉とは裏腹に拒むことをしないいつも通りの彼女にあれは夢だったのだと確信した俺は心底安堵した。
さあどれが夢だったでしょう?
1/23/2026, 10:30:44 PM