通りすがりの一般人

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【星は動かない】


小さい頃、ずっと不思議で面白かった事がある。

それは、夜空の星が自分が逃げたら追いかけてきたり、星を追いかけたら逃げたりする事だった。

もちろん、星が追いかけたり、逃げたりなんてしない。

でも、小さい頃は本当にそれが不思議で、面白くて、星と遊ぶのに夢中だった。

夜、両親と一緒に近所の公園に行き、広い夜空の下で星に追い付こうと公園内を駆けた。

1番大きな星を見つけては追いかけて、赤っぽい色や青っぽい色の星を見つけては逃げてみたりした。

大人になった今は、星を見ても追いかけたり逃げたりしない。

...でも、今日の仕事帰りの事だ。

仕事場から家の帰路の途中ですれ違った親子の幼い男の子が星を見て母親に言った事に私ははっとした。

「ママ、星が追いかけてきてるっ」

「星?追いかけてきてないよ、動いてないでしょ?」

「ほら!見てみて!動いてる!追いかけて来てるよ!」

母親にはピンときていない、子供の言う星が追いかけてくると言う発言。

そういう感性は、星の仕組みを理解してない、純粋な子供だからこその発見だったのか...と。

親子と完全にすれ違った後、私は男の子の発言を聞いて初めて、今日星を見た。

なんだか懐かしい気持ちに駆られて、私は夜空の1番大きい星を追いかけようと、駆けて家に帰ってきたんだ。


お題「夜空を駆ける」完

2/22/2025, 5:41:42 AM