日々好日

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涙の跡…………


猛暑の中、何処からやって来たのか?

炎天下の庭から我が家の玄関に子猫が
みゃ〜みゃ〜鳴きながら私の足元に
すり寄って来た。
一瞬戸惑ったけど子猫を抱き上げ保護した。
まず病院に行かねば、とりあえず、水とご飯、ベッド、
子猫に必要な物を準備しながら、この子を
どうしよう……と迷いが浮かぶ。
我が家には既に3匹いるので飼えないと思った。
7月6日保護なので翌日七夕にちなみ彦星くんと
仮の名前を付けた。

早速、何人かの友人知人に里親さん探しを
お願いした。
1人がフェイスブックに里親募集を載せてくれた。
偶然、情報を見つけた方が里親候補に立候補して
くれた。
話しはトントン拍子に進み、我が家でまず
子猫と面会して頂いた。
柔らかな笑顔が素敵な40代くらいの女性。
2月に19歳の飼い猫を亡くし、家族が皆寂しくて
子猫を飼いたくて、あちこちSNSで情報を見ていたとの
こと。
彦星くんを気に言って頂き、お迎えが決定した。
里親さんの都合もあり2週間ほど我が家でお世話して
正式譲渡となった。

小さな彦星くんは、とにかくやんちゃで甘えん坊。
我が家の大人猫3匹に遊んでほしくてじゃれながら
追いかけて 3匹は逃げて回るという行動に出た。
どの猫も小さな赤ちゃん猫に危害を加えない。

我が家のボス猫レイくん、右前足がない
障害のあるこはるくん、神経質でシャイなメス猫の
こなつちゃん、この3匹は、生まれて初めて
推定2ヶ月の子猫を見たのだ。

小さなやんちゃ坊主に振り回されてこなつは、2階の
部屋に逃げて降りて来なくなった。
3日目、ようやく一階に降りて来て
彦星と一緒にご飯を食べてくれた。

こはるは、彦星くん何度もタックルをかけられ
抱きつかれたが抵抗せず不思議と子猫を受け入れていた。

ボス猫レイくんは、彦星が寝ていると側に来て寝姿を
見守りキャットフード食べていても横取りしない。
小さな彦星を守っているみたいに見えた。

猫も縄張りがあり、我が家は1つのテリトリーで
彦星は、この場所に居ることを3匹に受け入れて
もらえたのだと思う。

2週間後、里親さんが息子さん娘さんと3人で
お迎えに来てくれた。
子猫と初対面の2人は彦星を可愛いと目を細めながら
ずっとおもちゃで遊んでくれた。
持参したゲージに彦星を入れ蓋を閉めたら
彦星が不安そうな声でみゃ〜みゃ〜鳴いた。

その声を聞きつけたレイが駆け寄る。
ケージ越しに覗くレイ。
こはるが部屋の隅っこでじっと見ていて
こなつは玄関の棚にじっとしていた。
彦星くんとのお別れを感じていたのだ。

里親さんのお母さんがレイくんに涙が出ますと
目頭を押さえた。

そんな3匹の切ない姿を見ながら里親さんご家族が
彦星を連れて帰った。

彦星が去った部屋は、同じなのに妙に広く
感じた。

翌日、レイがいつものようにキャットフードもらいたくて
夫の足元に擦り寄って来た。

フードをあげても食べず夫を見上げみゃ~と鳴いた。

猫語があるなら、彦星を何処に隠したの?と言ってるようだなと夫が話す。

こはるは、彦星がずっと居たリビングに1日中寝ていた。
普段はとなりの座敷に居ることが多いのに。
彦星が現れるのを待ってるみたいに……

こなつは一緒にご飯を食べていた彦星がいないので
何度も振り返る仕草をしていた。

猫は涙は流さない。
でも寂しいという気持ちはあるのだ。

それぞれの心の中に涙の跡を隠している。

この猛暑の夏、小さい子猫が疾風のように
我が家の3匹の心の中を駆け抜けて行った。

彦星ロス……猫たちだけでなく私も夫も同じに
ロスがしばらく続きそうだ。







7/26/2025, 12:59:41 PM