書く習慣:本日のお題「風に乗って」
風が強い地域にいるので、風に乗っていろんな情報がやってくる。春から夏へ移り変わる境目特有の、少しの埃っぽさと湿り気を帯びた暖かい風だ。街路樹の葉っぱの甘い香り、嗅ぎなれた工場の臭い、どこかの家の鰹節の出汁の匂い。実家で犬を飼っているので、犬との散歩中に風からいろんな匂いを感じて「○○の匂いがする」と考えるのが癖になっている。
風に乗って聞こえる音もさまざまだ。何種類かの鳥の声がする。カラスやスズメのお馴染みの声に、春ならではのイソヒヨドリの軽やかな歌い声。イソヒヨドリのオスは明るめの藍色をしていて、お腹から下は鮮やかなオレンジ色のエプロンを締めたような配色になっている。
もし来世生まれ変われるなら、イソヒヨドリになるのもいいかもしれない。
私がイソヒヨドリなら、日がな一日カーブミラーなどで自分の素晴らしい色づかいの姿を眺め、音楽を聴く代わりに自分で歌い続けて、一代限りで死ぬだろう。そしてアホのナルシストなイソヒヨドリを憐れんだ神様が、カーブミラーの前で事切れた小鳥を青とオレンジのバイカラー(二色)の花に変える。そして「この雑草には『自分の姿と声に魅了されたイソヒヨドリが花になった』という伝説がある」と後世まで語り継がれる。更に時代が下ったら「ギリシャ神話に類似のエピソードがあり、イソヒヨドリグサ(仮)はナルキッソスをモチーフに作られた比較的新しい民話である」と民俗学か何かで考察されるのだ。
さて、せっかくの連休なので、実家に帰ってみた。
愛すべき茶色のダックスフントと再会した。よく虚空に向かって吠えているので、以前は「幽霊!?」と人間がビビっていた。しかし今回の私はひと味違う。これはひとえに友人が「犬猫は人間より虫の気配に聡いから、人が気づかないレベルの虫に吠えたり目で追ったりする」と教えてくれたからだ。
その知識を頭に入れた状態で犬を観察すると、確かに刻一刻と顔の向きを変えて、何かを追う動きを見せている。
犬が顔の向きを固定したまま吠えている時、その視線の先を追ってよくよく目を凝らしてみたら、壁に季節先取りの蚊が止まって一休みしていた。まだ4月なのにずいぶんお早い登場だ。現場が天井付近だったため、背の高い父に退治を依頼した。
実家には虫がよく出る。田舎はそんなものだろう。我が家にやってくる虫の何割かは、この季節に吹く強い風に乗って侵入してくるのかもしれない。
4/30/2026, 1:54:47 AM