【私のトラウマ】
あれは私がまだ7〜8歳の頃、
ギリギリ記憶に残ってるぐらい昔の話。
私の父はサービス業で、土日祝は絶対に仕事。
だからあれは、
夏休みなどの長期休暇中の平日の夜の思い出。
年に数回あるか無いかの、家族4人での外食。
チェーン店のステーキ屋さんで夕飯を食べて、
店を出た。
車に乗り込むまでの距離を歩く間に、
私は近くのパチンコ屋のネオンに見入ってしまった。
不規則なリズムで点滅し、
流れるように動く、カラフルな光。
文字が浮かび、消え、
また形を変えて、陽気に動き回る。
私はその点滅のスピードに追い付こうと、
夢中で踊り始めた。
ジャンプし、両手を広げ、体を揺らした。
そして私がハッと気付いた時、
家族の乗った車は、
私を乗せないまま急発進した。
大慌てで車を追いかけて走った。
今思えば、ほんの数メートルの事だっただろう。
急発進だと感じたのも、きっとただの徐行で。
それでも当時の私にとっては、
何十年たっても思い出す度に心がザワザワする、
立派なトラウマになっている。
後部座席のドアを急いで開けて乗り込むと、
ミラー越しに父の険しい顔。
母も無言で睨んでくる。
母はいつもそうだ。
父や祖父母の前では、絶対に怒らない。
黙って睨み付けてくる。
そして夜、祖父母や弟が眠りについて、
父が遅くに帰宅するまでのわずかな時間に、
わざわざ私を起こして、往復ビンタの説教が始まる。
これは、そんな思い出の中のひとつだけど、
捨てられるという恐怖を強く感じた、
特に思い出したくない、
けれどはっきりと覚えている出来事だ。
7/18/2024, 9:20:55 AM