独特のアクセントで私を呼ぶ声。考える時に頬へ当てる指の癖。時折伸ばされて半音上がる語尾。耳にかかり切らずに一筋だけ零れる髪や、違う角度で上がる左右の眉。 最初は一体どれだっただろう。数え上げればキリがない。蒐集しては心の奥へと仕舞い込んだそれらを、夜の底でひとり取り出して愛でる。 息を呑むほど美しく、どれひとつ手の届かない美しいものたち。『秘密の標本』
11/3/2025, 9:03:04 AM