300字小説
君の描く『僕』の世界は
無色の世界が色づいていく。君が書く物語の主人公はいつも君の分身たる『僕』だ。舞台によって子供になったり大人になったり、少女になるときもある。
君が少女の頃に書いた世界は瑞々しいファンタジー。そこで『僕』は仲間を連れ、世界の謎を解く冒険者になる。
大人になった君の書いた世界は愛憎渦巻く現代劇。そこで『僕』は愛ゆえに周りを傷つけていく身勝手な弱い男になる。
歳を重ねた君の書く世界は複雑な事件を連ねた宮廷物。『僕』は宰相となり陰謀から王子を守る。
そして……更に歳を経た君が書く世界はなんでも無い日常に愛と幸せを見つける物語。『僕』は君の愛した人のように、さりげなく何気なく優しさを贈るカフェのマスターとなる。
お題「無色の世界」
4/18/2024, 11:20:47 AM