テーマ『待ってて』
『待っててな』
子供を宥めるみたく大きな手のひらが、わたしの頭をそっと撫でる。
行かないで。一緒にいてよ。
そんなことを泣いて喚いたところで、あなたは苦しそうに笑うだけってことをもうわたしは知ってしまっているから、口をぎゅっと閉じた。
いつもは待っててなんて言わないくせに。
らしくない言葉を言わないで。
待っててって言葉はちゃんと約束が守れるときだけ言える言葉なんだよ。お日様が昇ってきたのに、あなたはまだ帰って来ない。夜には月が煌めいて、星だって輝いているのに寂しくて。雨の日は余計と塞ぎ込んでしまい、曇りの日はもしかしたらのことを考える。
こういう人を選んだのは紛れもなく自分なのだ。
こういう世界で生きる人を選んでしまったのに悔いはない。
だけどやっぱり涙が勝手に流れてしまう。
ねぇ、待っててってどのくらい?
連絡もつかないから、心配してるんだよ。
ご飯は食べてる?ちゃんと寝れてる?怪我はない?
まるでお母さんのようだけど、それくらいあなたのことを昼も夜も考えてるの。
なのにあなたを前にしたときのわたしったら、結局言いたいことは沢山あるのにこの言葉しか思い浮かばなかった。
「……っ会いたかった」
2/13/2024, 10:47:30 AM