バイト先の先輩は、夕方が嫌いだ。
随分前に先輩とバイト終わりに歩いていた時、日没の、太陽が夜に溶けていくその様子を、先輩は「虚しくなる」と言っていた。もの悲しい気持ちになるらしい。
何気ない会話だった。その時の私は夕方なぞ気にしたことがなかった。
夏の終わりから秋の季節にかけて、段々と日が暮れるのが早くなってくる。暑苦しいほど輝いていた西日の寿命が近くなる様子は確かに言われてみれば、哀愁を誘うものだと思う。
私は先輩のように風景にこだわりはない。
秋の黄昏に切なさを覚えるようなロマンチストではない。
しかし先輩が「切ない」と言った景色を見ると、先輩を思い出すようになった。私にとって秋の侘しさは、先輩の横顔になったのだ。
昔の人はこの気持ちをタソカレと呼んだのだろうか。
お題/哀愁を誘う
11/4/2024, 6:03:59 PM