『遠くの街へ』
願うことならば、貴方と共に行きたかった。
私も一緒に連れて行って欲しかった。
貴方は悲しいくらいに優しい人でした。
傷つきすぎて、心を閉ざして、誰にも期待しないように諦めているような人でした。
それでも、私を救ったのは貴方でした。
どこにも行き場がなくて、ここじゃないどこかに憧れて、逃げ出したかった私を救ってくれました。
貴方は私にとっての唯一でした。
死にたい私は貴方のためならもちろん死ねます。
それでも、貴方のためなら生きたいとも思えます。
それは私にとっての最上級の愛でした。
幼い私には為す術なく、貴方に救われてばかり。
私も貴方を救いたかった。
あれから数年経って私も大人になって、今度こそ貴方を救おうと思いました。救えたはずでした。
あの日確かに貴方は言ったのです。
私に救われたって。救ってくれてありがとうって。
ねぇ、嘘だったのですか?
その言葉は私を思っての嘘だったのですか?
それならば、貴方は優しすぎます。
私をそれほどに思ってくれるのならば、
教えて欲しかった。
せめて一言言って欲しかった。
自由になりたい私を自由にさせてくれた貴方は、
自由に囚われてどこにも行けなくなっていた。
貴方を救うには、私はまた幼かったのでしょうか。
でもきっと、仕方がないのでしょう。
貴方はそういう人です。
でも、それでも、お傍に置いて欲しかった。
遠くの街へ行ってしまった貴方は幸せですか?
貴方のいるそこはどうですか?
今すぐあとを追いかけたいのに、貴方の言葉が呪いとなって行かせてもらえないのです。
あぁ、ほんと、ずるい人。
2026.02.28
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2/28/2026, 10:49:19 AM