「少し付き合ってくれますか?」
そう唐突に君が言ってきたのを今でも覚えてる。
真っ直ぐで儚げでそれでいて
力強い意志を感じさせるその目で、
俺の顔を見据えてきた君を。
祭囃子の音が聴こえる傍ら
君と横になって歩いていた。
大勢の人々が行き交う雑踏の中
君は淡々と話を続けていた。
「このままずっと人を恨みながら、生きていくんですか?」
「独り善がりの生き方はいずれ貴方を苦しめます」
「人を苦しめてもその先には何も有りません」
余計なお世話だと思った。
しかしそれに理解を示そうとしている自分もいた。
分かってはいる。
人を恨み、嘆き、痛め続けた先に
真の意味での幸せなど訪れはしないと。
だが自分にはそんな生き方しか出来ない。
後悔と後戻り出来ない暗闇の中で
必死にもがき苦しむ気持ちがお前に、
分かるのかと内心そう考えていた。
「君には関係ない」
揺れる水面に街の明かりが
ゆらゆらと映り込んでいた。
闇の果てに灯る白昼夢のように___
7/8/2021, 1:27:11 PM