ユートピアには時間も日付も何も無い。
けれど、存在はしているんだ、きっと。ただボクらが認識できてないだけで。
だって、花の種を植えて水をあげれば成長する。成長には時間が必要だからきっとこの世界には時間が流れているんだ。
ボクも演奏者くんも多分死ぬことはないけれど、時間という概念はある。それは、いつかこの世界が変わってしまうかもしれないそういう危険性を持っている。
認識できないからないわけじゃない、なんてのは生きていた時に宇宙人だとか異世界だとか神様だとかそういうものの類いの話の時に決まって出てきた。居ない証明も居る証明もできない。そういう話だ。
でも、この世界に時間があるという証明はできてしまう。
「嫌だな」
口から言葉が漏れる。
演奏者くんみたいに誰かが来ることが嫌なわけじゃない。演奏者くんとボク以上に仲良くなられたらまぁそれはそれで嫌だけど。でもそうじゃない。
いつか演奏者くんがどこかに居なくなってしまうのが嫌なんだ。
時間が無ければ、止まっていれば変わらぬ日常を過ごすだろう。ボクらが毎日やることを変えても、もし演奏者くんが居なくなってしまおうとしても次目が覚めた時にはこの世界に同じように居るだけなんだ。
それが良かった。そっちの方が良かった。
「時間なんて、止まっちゃえ」
全く神様も何も信じてないけれど、ボクは祈るようにそう呟いた。
9/20/2024, 6:22:58 AM