ビルの縁に座り、足をぶらぶらとさせていた。
ここから全体がよく見える。絶景だ。
「何してるの、グラッツィ...」
声のする方を向くと、黒い片羽に綺麗なレースのドレスを身に纏った堕天使レリーレがいた。
「何って、アレを見ていただけよ?」
私はそう言って下の方を指差す。
ゾンビやら魔女、吸血鬼に狼男達がうじゃうじゃいた。
「今日ハロウィーンなんですって」
「......えっと...だから...?」
「パーティーよ、パーティー」
「...?」
「貴方察しが悪いわね。人一人消えても気づかれないって事よ」
レリーレは驚いた様に目を見開いた。
「そんな......駄目だよ...!勝手に人の命を奪っちゃ...」
「あら?貴方もその気で来たんじゃないの?ご丁寧に弓矢も新調しちゃって」
レリーレの右手がぴくり、と反応する。
「何か...問題でも...?」
先程の弱々しい表情は何処へ行ったのか、鋭い視線を向けていきなり弓を構えてきた。
「あらあら、そんな顔しなくても私は横取りなんてしないわよ。それに私は不死身よ?そんな平凡なものじゃ私は死なないわ」
「...かの有名なグリーンアイドモンスターは悪魔祓いの儀式で消滅すると聞いた......私は元天使、悪魔祓いに似た方法ならあるよ」
「だから私は貴方の邪魔なんてしないわよ。それに貴方、もう天使ではないのでしょう?私が止める理由もないわ」
「.........」
「早く行かなくていいの?日が暮れちゃうわよ。ハロウィーンは一日きりなんだから」
そこまで言うと、レリーレは弓を下ろした。
「...私は他の所で狩ることにする......さよなら...」
そう言って羽を伸ばして飛んで行ってしまった。
「......ふぅ、中々面倒だったわねあの坊や。まぁいいわ。さて」
私は再び下に視線を戻す。そして
「楽しみだわ」
立ち上がり、空を見上げる。
さぁ、街へ行こう。
お題 「街へ」
出演 グラッツィ レリーレ
1/28/2024, 1:01:10 PM