『バカみたい』
 「どうして恋愛映画の主人公は顔が小さくて目が大きくて肌が綺麗で細身の役者ばかりなんでしょうね?
 世の中には色んな容姿の人がいるのに。
 どんな容姿であってもそこには美醜の差なんて無いし、それぞれがとても素晴らしい筈でしょう?」
 「……いや、ありふれた容姿の人が恋愛するよりも、どうせなら美男美女が観たいじゃん。
 かっこいいし、可愛いし」
 「それは容姿差別でしょ。
 さっきも言ったけど人の容姿に美醜の差なんてないんだから」
 「いや?あるよ」
 「……無いわ」
 「あるって。
 人には誰だって出来ることと出来ないことがあるでしょ?
 それと同じで容姿も一つの才能なんだよ。
 彼ら彼女らは大勢に求められる容姿を運良く持つことが出来て、なおかつそれを維持する為に努力してるんだ 」
 「容姿なんて生まれ持ってのものじゃない!
 そんな話は理不尽よ、私だって主役になりたいし、それは当然の権利だって思ってるんだから!!」
 「……コメディ映画ならいけるんじゃない?
 それに容姿以外の才能だって、生まれ持ってのものだと思うよ」
 「れ・ん・あ・い・映画ッ!
 そもそもあんただって似たような容姿の癖にバカにしちゃって!
 悔しくないの?!
 私達が影でなんて言われてるか知ってるでしょ、おたふく姉妹よ!!」
 「なんか可愛いよね」
 「可愛くないっっ!!」
 「……そうは言っても仕方ないでしょ。
 多くの人が百メートルを九秒台で走れないように、私達だって美少女にはなれないんだよ。
 馬鹿にされるのは嫌だけど、個人的にはおたふく姉妹って呼ばれ方も気に入ってるし……そこまでの熱量なんて私にはないよ」
 「……このバーカッ!
 もうあったまきた!あんたなんて知らないっ!
 豆腐の角に頭ぶつけて死んじゃ……うのは可愛そうだから、頭が汚れちゃえっ!!
 こんな家出てってやるんだから!
 ……夕ご飯には戻るからねっ!」
 ──ドタドタ ガシャーン バンッ
 「……やっぱりコメディ映画ならいけると思うんだけどなぁ」
3/22/2023, 1:33:28 PM