イーシャ

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 夏祭り当日、多くの屋台や人々の波を横目に僕はスマホで時間を確認する。
 約束の時間から10分ほど経っているが、この人混みなので遅れるのは仕方がないことだろう。
 それにもしかしたら僕を見つけられていないだけで、もう近くに来ているかもしれない。
 そう思い顔をあげてサッと辺りを見渡す。
 すると直ぐに鮮やかな赤いハイビスカスの髪飾りが目についた。
 なんだやっぱり近くに居たのか。
「彩佳!こっち」
 そう声をかけると、クルッと女性が振り向き、こちらに笑顔で手を振った。
 「あっ!やっと見つけたー」
 そう言って駆け寄る彼女に僕は思わず見とれていた。
 浴衣を着てくることは聞いていたけど、ここまでの威力とは。
 「こんなに人いっぱいの中よく私を見つけられたねー」
 まだ動揺中の僕だったが、普段通り接してくる彼女に悟られまいと精一杯冷静に返す
「そりゃ分かるでしょ頭にそんなに分かりやすい目印があれば」
 彼女が普段から大好きだと言っているハイビスカス。
 僕は花には全く興味がないけれど、ハイビスカスを見ると自然と目が惹かれて、彼女の顔が浮かぶようになっていた。
 「あっこれねー綺麗でしょ?今日の為に買っておいたの」
 彼女が好きなハイビスカス
 花言葉は繊細な美、新しい恋
 「じゃあ行くか!そろそろ花火も始まるし」
 僕はそう言って彼女の手をとった。
 彼女は少し驚いた顔をした後すぐにいつもの笑顔に戻り、手を強く握り返してきた。
 赤いハイビスカスの花言葉は勇敢。
 僕は少しだけ勇気を出して歩き出した。

6/26/2023, 7:35:33 AM