朝の光で目覚めるのは、社会競走のスターターピストルの音が頭に鳴り響くような気がして苦手だ。
だから朝日が昇る前に生活を始める。自分だけフライングしてルール無視の1日を踏みしめられる気がする。
数年前は、日がこのまま昇らないでくれと自殺願望に似た何かを願いながらベッドで怯えていた。
朝日に怯えず強くなれたのは、窓際のベッドでおかしな寝相で寝ている彼女のおかげだ。
「どうやったらそんな体勢になれるんだよ」ツッコミを入れながらコーヒーを淹れる。
今日もコーヒーが苦いことを確認してから視線を寝相に戻す。
今日も日が昇る。
窓から差し込む光は、寝顔に反射してやわらかくなって僕の目に届けられる。
今日も生きていこうと活力が湧く光。
残酷な1日の始まりを寝ているだけで美しいものに変えてしまう魔法に惚れ惚れする。
あしたも日が昇る前に起きようと決意する。
10/16/2023, 7:28:40 PM