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 ぷぅ、ぷぅ、鳴る音。寝息か、それともいびきか。
 バンザイをする格好。頭が大きすぎて、腕が短すぎて、グーに握った手は頭の天辺まで届かない。
 ぷくぷくまぁるいほっぺ。ぺちゃぱな。髪は薄くて、これが大人ならほぼハゲだ。
 アンタもそうだった。みんなそうだった。生まれたときはみんな、猿か亀かあとなんだかもうひとつ何だったかに似ていて、バンザイをして寝る。嫌なことも悲しいことも知らないと、腹が減ったら泣いて、気に入らないと泣いて、本能で愛想を振りまいて、寝る。
 人はいつまでこうなのか。いつから、こうでなくなるのか。
 いつから、こんな風になってしまった。
 斜に構えて、悲観して、人のせいにしてばかりの嫌な人間にはなってくれるなよ。
 そう頬をつついた。柔らかな肉が愛おしくて、何度も何度も指を弾ませた。寝息が、少し音を変えた。ぶぅ。止めろと言ったのかもしれない。

5/31/2024, 9:17:17 PM