とある恋人たちの日常。

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 人とのお別れが嫌い。
 寂しさを見ないふりして、みんなの前で平気な顔をする。
 
 でも心に空いた穴は塞がることはなくて。
 別な人とのお別れがあると一気に広げられてしまう。
 
 いやだよ。
 つらいよ。
 かなしいよ。
 
 また会える。
 もちろんそういう人もいるけれど、もう二度と会えない人だっているんだ。
 
 その人にとっては私の存在は大したことは無いけれど。
 小さくても心に残る存在だったんだよ。
 
 先日、この都市を離れると言ったお世話になった人達は、きっともうここには戻ってこない。
 あの晴れやかな笑顔で別れを言われたら、もう会えないって分かるんだ。
 
 お世話になった人達だけでこれなんだもん。大好きな人だったらどうなっちゃうか分かんない。
 
 会社の社長とか、友達とか、恋人とか。
 
 布団にくるまって体育座りをしながらそんなことを考えていたら、布団の上から抱き締められる。
 こんなことをしてくれるのは一人しかいない。
 一緒に住んでいる大好きな恋人。
 
 布団を捲り上げて私の顔を見つめる。眉を八の字にして正面から抱き締めて背中を優しくポンポンとしてくれた。
 
 彼の行動に涙はもっともっと溢れて止まらなくなる。
 
 お願い。
 あなただけは、どこにも行かないで。
 
 
おわり
 
 
 
四〇二、どこにも行かないで

6/22/2025, 12:19:47 PM