つぶて

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ジャングルジム

 ジャングルジムの頂上で、恐る恐る立ち上がった時のことを思い出す。夕暮れ時。クラスメイトたちが姿を消してから、煮え切らない自分と決別するために、骨組みに足をかけた。最上段まではすぐに登れた。あとは立ち上がるだけだった。肝を冷やすには十分な高さ。手を離してしまえば、自分を支えるものはないこともわかっていた。最初に手を離した。屈んだままバランスをとる。重心を意識し、膝に力を込める。目線が、ぐぐぐ、と予想より高くまで上がっていく。膝が伸び切った時、できた、という実感が足元から這い上がってきた。思ったよりも簡単だと思った。その高さは生々しいスリルとともに、自分のものになった。
 久しぶりに訪ねた地元の公園はすっかり様相が変わっていた。ジャングルジムはほとんどなくなっていた。六段あったそれは、落下による事故を危険視され、二段の立方体になっていた。肌の白い少年たちが退屈そうに腰掛けて駄弁っていた。
 私はどことなく彼らが哀れに思えた。その時、ポケットの右手が固い感触を捉えた。取り出してみると、燃料の入った百円ライターだった。ちょうど少年たちが場所を変えたので、私はそれをジャングルジムの角に置いて帰った。

9/23/2024, 1:01:46 PM