私は地位や名誉、評価には興味がないが、一応、最強と呼ばれている。そんな私に挑んでくる者も多い。まったくだ。驕れる者は久しからず。そういう者には、その者を思っての圧倒的な制裁を与える。そうすれば、恨みすら浮かばない。
ある日、旅人である私は、凍てつく星空が有名な土地を訪れた。ここは絶景スポットだが、心霊スポットでもあり、また作物が育たない土地であったため、人は集まらない場所だ。あいにく今日は曇っており、星は見えないが。そんな場所で、私の前に現れた者がいた。また私に挑む驕った者かと思った。ところが、今までと違ったのは、その者の目だ。何の気力も感じられない目をしていた。
「あなたは何者?」
『私はあなただよ。』
妙に納得してしまった。心霊スポットだし、たしかに似ている目とも言える気がした。
「私に何か用?」
『助けてほしい。』
「どうすればいい?」
『世界を、壊して。』
「…どういうこと?」
『あなたはそれを、無情にやってきたじゃない。』
彼女は無表情のまま、巨大な魔力球を生み出した。
「え…?」
『こうやって、みんなの意志を砕いてきた。』
「…そうだね。」
私は同様の魔力球をかかげた。
「…そうしていないと、私の力の意味が、わからない…。」
2つの魔力がぶつかり合う。
1番上には、頼る者がないこと、それが恐ろしかった。相手になる者も、切磋琢磨できる者も、苦悩を共有できる者も、誰も、何もない。私は、1人だ。
魔力は弾け、雲が吹き飛んだ。
「!」
星空に照らされた彼女は、徐々に光の粒になっていく。
『私の、負けだよ…。』
彼女は笑っていた。違う、引き分けだ。
「…。」
『どう?少しは、絶望した?』
「しない。でも、感謝してる。」
まだ、上はあるし、私に向かってくる者に対してできることがあると思った。
『綺麗でしょ?ここは、あなたの心だよ。』
彼女は完全に消えてしまった。
「そんなわけ、ない。」
私はまた別の旅に踏み出した。
12/2/2025, 1:57:27 AM