たやは

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鋭い眼差し

試合の間、ブラジル代表の日本人監督は鋭い眼差しで戦況を見つめていた。

曽祖父じいさんが日本から船に乗ってブラジルに来て80年近くが経っていた。曽祖父じいさんはブラジルで柔道の道場を始めたが、柔道を知るブラジル人は少なく、なかなか生徒も集まらない状況だった。

それでも、柔道の素晴らしさを伝えるために、道場で生徒たちと汗を流していた。
生徒の中に柔道でオリンピックに出場した選手がいたことで、道場は有名となりおじいさんの代になる頃には、たくさんの生徒がいた。

柔道は力任せに相手を投げるたけでなく、相手の力を利用した技や体全体を使ったしなやかな投げ技が魅力だ。ブラジル人は柔道を好み、尊敬する愛好家が増えていった。

生徒たちが成績を残すことで、道場を継いだ自分の名声はどんどん上がり、ブラジル代表の監督として声がかかるようになっていた。

柔道世界選手権。
決勝の相手はブラジル対日本。 
監督としてブラジルを率いている自分。
そして、日本の監督は自分が選手のときのライバルだ。

相手の監督に鋭い眼差を向ける。柔道は日本だけのものでははない。先駆けとして辛い日々を強いられた人のためにもこの試合絶対に負けられない。

10/15/2024, 11:33:38 AM