夜空を走る一筋の光。
それを皮切りに、次々と光が走る
流星群である
人々は、暗闇のカーテンで行われる光のショーに目が釘付けだ。
だが人間は気づかない。
流れ星の一つが、不自然な軌道を描いている事を。
それは地球外生命体――宇宙人の来訪を意味していた。
人知れず地球にやってきた宇宙船は、誰もいない山に降り立つ
宇宙船の扉は音もなく開き、その中から宇宙人――タコのような形をした二人の火星人が出てくた
「うまくいったな」
「はい、銀河連邦に動きはないようです」
銀河連邦……
この宇宙の平和を守る治安組織である。
地球人は知る由もないが、地球は『未開の星』として、許可のない渡航を禁止されている。
しかし、この火星人たちは許可を得て地球に来たわけではない。
流星群に紛れて、銀河連邦の目を欺きこの地球にやって来た
火星人たちは密航者なのだ。
彼らはなぜ許可を取らないのか……
それは彼らには、口に出すのもおぞましい目的があったからだ。
絶対に許可が下りないことを分かっての、密航なのである。
「タイムリミットは、流星群が離れる8時間後です。
手早く済ませましょう」
「そう急かすな。
『アレ』は逃げたりはしない」
上官と思わしき火星人が、獰猛な笑みを浮かべる。
その飢えた目は、人間が見たならば腰を抜かして失神するだろう。
彼の顔は、自身の悪意をそのまま表したようだった。
しかし、このまま目的地に向かえば、騒ぎになることは明白。
その騒ぎは察知され、すぐさま銀河連邦がやって来るだろう。
そうなれば目的どころではない。
彼は地球人に擬態するため、プログラムを作動させる。
「翻訳システム起動、擬態システム起動。
動作チェック、オールグリーン
……これで、どこからどう見ても地球人にしか見えません」
「よろしい、では行こうか」
そして彼らは目的にに向かって歩き出す。
「ですが少し遠いですね。
現地の交通機関を使いましょう」
「そうだな」
地図を確認し最寄駅へ向かう。
そこから新幹線に乗り、乗り継ぎで電車を乗る……
そうして辿り着いた場所は――
「ついに来たぞ、道頓堀。
食の聖地!」
上官の火星人が感極まって、喜びの声を上げる。
周囲の地球人に不審な目を向けられるが、二人は気づかない。
ついに念願の物が手に入る高揚感でいっぱいだからだ。
そして火星人は冷静さを装いつつ、目的地で合言葉を発する。
「大将、二人分くれ」
「あいよ」
そうして火星人たちは、作り立てのたこ焼きを受け取った。
そして鰹節が踊るたこ焼きに少し息を吹きかけ、火傷しないよう口に放り込み――
「うまい!
やっぱり同族の共食いは最高だ!」
11/6/2024, 1:34:48 PM