お題『仲間』
『仲間だから、助けるのは当たり前だろッ!』
操られた僧侶を叱咤激励する勇者の様子を水晶玉に映し出しながら、私は反吐が出る想いがした。
私はこれまで何度も勇者一行に私の配下を派遣してきた。私を殺す存在は跡形もなく排除する必要があるからだ。
だけど、勇者は仲間と力を合わせ幾度となく配下を殺してきた。正直配下など、私にとって肉の盾であり駒でしかない。
しかし、勇者はやたら『仲間』という言葉を連呼し、メンバーを叱咤激励している。その姿がやけに目につく。
その同じ目で私を蔑み、その同じ手で私を理不尽に殴りつけ、その同じ口で幾度となく私に罵詈雑言を浴びせたくせに。
勇者と私は同郷で、幼い頃、事あるごとに勇者は私をいじめてきた。私は彼が大嫌いだった。
村に魔物が攻め入った時、生き残ったのは私達二人だけだった。『絶対に勇者になってやる!』と彼が涙ながらに地面を殴りつけている横で、私は魔物に攫われるふりをして彼等に取り入った。
だから、今この魔王の椅子に座っていられる。
もうすぐ勇者一行は、私のもとに来るだろう。
もし来たなら、貴方が口癖みたいに叫んでるその薄っぺらい言葉を完膚なきまでに否定してあげる。
12/10/2024, 11:44:07 PM