形の無いもの、もしそれが実現するのであれば僕は真っ先にあの言葉を言うだろう。
「ねぇ健太郎さん、私の事好き?」彼女は上目使いをして僕に言った。
「あぁ、もちろん」
「世界で一番愛してる」
僕はそうやっていつものお決まりの言葉を発する。
そしていつも道理の嘘を吐く
彼女が帰ってくれば
「お帰り」と暖かいご飯を用意する。
彼女が寝る前には
「お休み」と甘い嘘のキスをする、
彼女が疲れたとでも言えば、どこからでもすっ飛んで会いに来たことだろう
かれこれうまくやっていたはずなのに、2週間前彼女に告げられた。
「もう、あなたとはやっていけない」って
「あなたに愛想をつかした」と僕はその言葉に酷く絶句した。
「あなたって冷たい人だったのね」
そう彼女は、別れに添えて去っていった。
無に言ったこっちゃない,
だって僕は愛された記憶も証拠も無いのだから
僕の親は里親だったし、友だちは少ししかいなかった。
だからといってメロスの友セリヌンティウスのような固い友情で結ばれた友は1人もいなかった。
悲劇のヒロインごっこをするなら「偽りの関係」と表してもいいくらいだった。
本当の愛なんてわからない、「愛してる」この言葉だけが本当の真実と言えるのか、
夜に遊び回る、若い女性と年の離れた男性
「愛してる」といいつつも、スマホばっかり眺めているあの人
薬指に永遠の愛の魔法を誓い、馴れ馴れしく女性の体を触る男。
愛何てどこにあるのだろうか?
その愛と言う基準はどうやって決めるのだろうか?
僕は路上にたたずむ黒猫のそばに駆け寄った。
「お前は、いつも1人なのか?」そう問うと
黒猫は不機嫌そうに喉をならした。
そしてニャーと甘える声で返事をした。
愛は計り知れない、それと同時に嘘かどうかがわからない。
僕は、雲一つもなければ星一つもないただ真っ黒な夜空を眺めながらため息を着いた
「愛を求めすぎていたのかもしれない」
そうやって今日もまた一人愛に餓えている人が増えていく、
形がないもの、それは1人1人が自由に形を変えられる。美しさが生まれると共に残酷さも生まれるのかもしれない。
9/24/2023, 1:41:44 PM