こぼれたアイスクリーム
私の好物はアイスだ。それは昔からずっと。
大好きな彼に出会い、幸せな時を過ごす時ですら、アイスは欠かせない。
そんな私が彼との子を妊娠した時も、幸せだ。
彼が喜んでお腹をさすった時も幸せだ。
彼は喜んで私を可愛がった。
身体を重ねた時ですら、私がアイスを好んで食べるのと同じように。
甘く優しい「バニラ」味。
でも怒った時は、苦くて冷たい「抹茶」味。
時々、ツンデレが発動する「チョコレート」味。
彼の蓋を開ければ、色々な味に出会えた。
でも、私は死んだ。
車に撥ねられたのだ。お腹の子とともに。
彼は泣いた。何味でもない彼。
初めて見た。
味が「こぼれた」アイスクリーム。
アイスは、どん底に落ちたせいか、
「「無味無臭」」だった。
8/11/2025, 4:58:19 PM