ミミッキュ

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"さよならを言う前に"

駅に電車が到着する事を知らせるアナウンスが響き渡る。まもなく電車が来る。身を引き締めて、皆に向き直る。
止めろよ…、そんな顔されたら……こっちだって辛いだろうが………。
鼻の付け根が、ツンッと痛くなるが、グッと堪えて言葉を紡ぐ。
「皆、改めて言わせてくれ。…短い間、沢山迷惑かけた。何度謝っても謝りきれない…。けど、それ以上に…短い間だったけど、楽しかった。皆と過ごして、あんなに笑ったり、がむしゃらになったりしたの、いつぶりだろ…。誰かと一緒にいて、こんなに楽しいって思ったのも、いつぶりだろ?何度楽しかったって言っても伝えきれない位、本当に楽しかった。…本当に、ありがとう」
全部は伝え切れてないけど、今伝えたい事を言い切って皆の顔を見る。出会った時からずっと、1番見てきた表情が浮かんでいた。
電車が到着し、ドアが開く。皆に背を向けて電車に乗り込む。
こんなに人との別れが辛いって思ったのも、久しぶりだな…。
また鼻の付け根が痛む。
まだダメだ、泣くのは…まだ。大人の俺がこんなんじゃダメだろ。ちゃんと笑顔で別れなきゃ。
身を翻して、皆に向き直る。鼻をすする音が聞こえる。
止めろよ、バカ……。
「さよなら。……ううん、またね」
そう言うと、皆がまた笑顔になって力強く頷いた。

8/20/2023, 10:58:30 AM