⚠死、血流、グロテスク表現があります。苦手な方はフィールドバックを推奨します。
【お題:ゆずの香り】
肉と骨を断ち切る感覚。鼻につく鉄臭さ。本来ならば、人が行き交う賑わった街だったのだろうと、かろうじてわかる、崩れた建物。
まさに、終末世界が目の前に拡がっている。
いつの頃からか、街に人を貪り食らう化け物が表れ始めた。世界は忽ちパニックに陥り、何人もの犠牲が出る中、立ち上がった組織がある。
それがユニオン。古の技術の研究を掲げた、胡散臭いと言われ続けた組織だ。
彼らはその古の技術を持って、化け物を退治し始め、更には異空間を造り上げた。
その異空間に、人間を住まわせ、元々の世界は化け物がいなくなったら帰れるように手配していた。
まぁ、今のところ化け物が消える気配はない。何体殺しても、殺しても、無尽蔵に湧いて出てくる。
正直鬱陶しいくらいだ。根源を突き止めねばならない。
ぎゅっと、手の中にある小型の機械を握る。これが、ユニオンが研究していた古の技術で、機械に付いたボタンを押すと、その姿を大剣に変える。
機械の種類によって武器は異なり、俺が持つのはパワー型。機械と人も相性があり、俺はこいつと相性が良かった。
ボタンを押す。瞬時に形態が変わったソレを、化け物に向かって振り上げる。
血しぶきが舞、肉が飛び散る。顔に付いた血を拭うと、ヌメりとした感触がした。
「まだだ、まだ突き止めちゃいない」
化け物がなぜ、人間を襲うのかはわからない。そもそもこいつらは何なのか。誰も知らない。
わることはそれなりに知能があること、そして人間を堕落させたり、洗脳させたりできること。
意のままに操られた人間は、死ぬまで自由がきかないこと。
『ありがとう、コウヤ』
ふと、最期が頭をよぎった。
鮮明に思い出せてしまう、その姿も声も、段々と冷たくなっていくその感覚も。
君を貫いた質感さえも。
俺にとって君は、まさに完成された美で。汚れなき人であった。いや、今もそれは変わらない、変わらないはずだ。
ユニオンを裏切るように洗脳された君を、ユニオンのメンバーは殺せなかった。信頼する仲間を殺せるわけもなかった。
けれど、その温情は地獄でしかない。意識はあるのに、洗脳からは逃れられない。
だから、剣を取った。誰も殺せないなら、誰も汚れられないなら、俺が汚れ役をやろう……と。
あの日から、ユニオンを飛び出し、単独でひたすら化け物を殺している。
化け物の中で目立てば目立つ程、あいつらは俺を狙うはずだ。
黒幕を必ず引きずり出してやる。
サァッと、乾いた大地に風が吹いた。
血濡れた戦場には似つかわしくない、ゆずの香りが鼻腔をくすぐった。
ーあとがきー
今回のお題は、ゆずの香り!
いやなんでこのお題で注意書き+戦場だよっ!って話ですが、これはゆずの花言葉に由来します。
「健康美」「汚れなき人」「恋のため息」
等だそうで。めっちゃ神格化されそうな組み合わせだなぁとなり、コウヤくんの記憶の図書館に来る前のお話となりました。
そもそもなぜ終末世界になっているかですが。普段書くレークスロワを含め、世界観としては物語の中に位置しているのです。
管理者と呼ばれる者は原作者。物語を紡ぐ者がいなければ、その世界は消えてしまう。コウヤくんはこの世界の管理者ではありますが、とてつもなく畏怖された子でもあります。
ただし、それは終末世界からずっと前の話ですが。
コウヤくんは、悪意を集める能力があります。そう造られた、人造人間ですが、作った側があまりにも強大な力に畏怖し、彼を封印してしまったという歴史があるのです。
結果的に、管理者への畏怖だけが世界に残り、管理者そのものは、世界に住む住人の記憶からは薄れていきました。
そうして、世界の崩壊が始まったというわけです。コウヤくんが探している「黒幕」は自分自身である……。
という、なんとも救いがない話が彼の話です。
いやぁ、最初はゆずの……香り……?何を書けと?となりました。花言葉調べて良かった。
さてさて、コウヤくんを今後語るかわからないので長くなってしまいましたが、今回のあとがきはここまで。
それでは、また、どこかで。
エルルカ
12/22/2024, 5:00:20 PM