hot eyes

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ふわっ、と触れたそれは、彼の手だった。

「っ...!?」
「あっ」
藍佑(あいすけ)は驚いて彼の手が触れていた髪を奪い取り、他の髪と一緒に1つにまとめて両手で隠した。
「ごめんね!急に触られるのは嫌だったよね」
「......なんで触ったの、千切るため...?」
「千切る?こんなに綺麗な髪なのにそんなことしないよ!」
「...綺麗?」
「そうだよ、君の髪は凄く綺麗だ。まるで星が浮かぶ遠い空のようにね」
彼は歯の浮くような台詞を何度も言う。そしてそれは偽りではなく、本心からのものだと藍佑も理解できた。
「......ふーん...」
「でも急に触ってごめんね、今度からは触っていいか聞くよ」
「.........もう触らないの?」
「え?」
「別に...千切るわけじゃないんでしょ?だったら触ればいいじゃん」
はい、と一束にした髪を彼の前に持っていく。
「いいのかい?」
「千切らないんだったら別に......あ、引っ張るのも無し」
「しないよ!」
では失礼...と山吹(やまぶき)は藍佑の髪をちょいちょい、と指先で触る。それ以上は、強く握ったりとか掴んだりとかはしなかった。

「.........もっとちゃんと触りなよ。そんなのじゃわからないでしょ」

「えっ」
ぐいっ、と彼の腕を引っ張って肩にかかっている髪を触らせた。
「あ、わっ」
「どう?」
「ちょ......ふ、ふわふわだね!」
「でしょ?」


「なんてこともあったよね」
ふ、と藍佑を見て微笑む。
「あー、あの時ね」
「あぁ、藍佑が自ら髪を触らせてくれた日のことは今でも覚えているよ」
「...まぁあの時はいいかなって思って」
短くなっちゃったけど、と襟足を触る。

「また伸ばそうかな」
「ボクはいいと思うよ。でも今の髪型も素敵だな」
「ん、じゃあ考えてみる」
「うん、楽しみにしているよ」

藍佑は内心、山吹って僕の髪好きだよなぁ、と考えていた。

お題 「Midnight Blue」
出演 藍佑 山吹

8/23/2025, 9:45:10 AM