散々な幸福

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自転車に乗って助けに行けたら良かった。
補助輪が取れない。
手のひらも、腕もこんなに心許なくて、走っていくにも僕の歩幅のなんと狭いことか。

びゅんびゅん風を切れたらよかった。

夏の色と一緒に、君が死んでいく。
褪せて、薄れて、汚れて。
顔さえもう分からなくて。

それでも。

「ずっと友達よ、わたしたち、離れてもずっと」

その、声ではなく言葉だけが、僕を追いかけてくる。
夏が来て、また。さよならの季節だ。

8/15/2024, 4:08:37 AM