ーいたー(無色の世界)
「お母さん、体がボコボコだった」
「体全体が?」
「そう!お母さん変になってた」
「そっか」
ここは不思議な世界だ。
この世界で、僕は生きている。
お父さんとして。
『いるのにいない』が通る不思議な世界。
みんな存在している。
だけど本当は、いないのかも知れない。
確認する術はない。
触れないし、見えないから。
ただ、“音”に意味を当て“言葉”としているので、意思疎通をとることができる。
つまり、聴覚があると言うこと。
物体としてあると言うこと。
概念ではないと言うこと。
「子供」を産んだのは、「お母さん」だ。
僕は彼女と結婚した。
何もわからなかった僕に、いろいろと教えてくれたのは彼女だった。
「子供がほしい」
そう彼女は言って、僕も頷いた。
瞬間、彼女は苦しみ始める。
うめき声が聞こえたから、
多分苦しんでいた。
僕はただ、どこにいるかも知れない彼女を想って、オロオロするしかなかった。
しばらくして、産声が上がった。
「あぁ、産んだんだな」と思った。
可愛らしい声。
そしてその子は成長した。
月日が経つにつれ、僕は彼女とその子が触れ合えるらしいと知った。
彼女によれば、親が子を見られるのは当たり前で、子供もまた、親を見れるとか。
僕には真偽が分からなかった。
実際、本当に彼女は産んだのか、その子は本当に子供なのかも分からないのだ。
孤独を感じた。
初めてだった。
この世界に来てから、初めて走った。
走っている気がした。
自分がどこにいるか分からないのだから、移動する意味はあまりないけど。
離れられる気がしたから、走った。
「お父さん!」
子供の声で、僕は走るのをやめた。
本当に、走っている気がしていただけだった。
移動なんて、していなかった。
僕はどうして動けないのだろう。
子供の無邪気な足音は良く聞くのに。
彼女だって、子供と隠れんぼをしているらしい行動をするのに。
どこに隠れるのかは甚だ疑問ではあるが、
彼女によるとどうやら僕には見えない、“壁”があるらしい。
僕の世界は真っ白だ。
白と言うのも変な気がする。
「なにもない」がぴったりな世界。
僕はいつから、こうだったのか。
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こんにちは。15:52
4/19/2026, 6:52:21 AM