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高校生の時の話だ。

私は電車通学をしていた。

家から最寄り駅に向かうまでは、音楽にノリながら歩くのが恒例だった。

ある朝、女性が横から話しかけてきた。

落とし物でもしたかな?とヘッドホンを外すと、「おはようございます。いつもノリノリで楽しそうですね」と話しかけてきた。

突然の事態に、言葉が詰まった私を見て女性は微笑み、「なんの曲を聴いているんですか?」と会話を続けてきた。

私は戸惑いながらも、ミセスグリーンアップルです。と言った。

すると女性は「私も聞いてます。いい曲たくさんありますよね!」と笑顔で返し、「私はコンビニに寄るので、良い一日を!」と去って行った。

距離感の近い人だな。と思いながらも、胸の奥がキュッとして暖かい気持ちになった自分がいた。

それから2週間後、私は学校に向かう電車に乗っていた。いつものように、電車の開閉扉付近に立って景色を見ていたら、その女性が近づいてきた。

「久しぶりにお見かけしました」とラフな感じで話しかけに来た。私も、久しぶりですね!と返すと、女性がさらに近づいてきて、「何かついてますよ」と腕についていたホコリを払ってくれた。

なんだろう、あばら骨の奥がバクバクして、なんだか嬉しい、初めての感情だった。

それから、会話が弾み、あっという間に学校の最寄り駅である終点についた。

連絡先を交換し、その場は終わった。

後日、遊びに誘おうと思い連絡をしようとしたが、緊張してメッセージを送信できなかった。

その日から、その女性と会うと緊張して上手く喋れなかった。そして、距離が縮まることはなく、その女性との関係も次第になくなっていった。

この女性と出会い、私は初めての感情をたくさん経験した。

この、心臓をキュッと掴まれたような暖かい気持ちは何だったのだろう?なぜ会話をするだけで緊張したのだろう?と思っていた。

21歳の今ではわかる。

「恋」だ。

終点で連絡先を交換した瞬間を今でも忘れない。



まぁ、この話、全部嘘ですけど。



話の終点と掛けまして、電車の終点と解きます。
その心は、どちら「落としもの」が届くでしょう。







8/10/2024, 12:00:27 PM