#空を見上げて心に思い浮かんだこと
ベランダからすーっと涼しい夜風が吹いた。
春一番ならぬ秋一番が、半透明色のカーテンを揺らす。
すぐそこに置いてあるサンダルを履いた。
冷たくなった手すりに手を掛けると、
これは子供が落ちないために付けたものだったと
気づいた。
もちろん、子供なんて出来なかったが。
それどころか、夫さえもいなくなってしまった。
今頃何をしているのだろう。完全に縁を切ってしまった私には一生わからない問題だ。
ふと空を見上げる。
私の気持ちとは裏腹に、空には雲一つなかった。
澄んだ空に微かに星が見えた。
それでも田舎に住んでいた時よりかは遥かに少ない。
ネオンやら車のライトやらビルの明かりやら。何やら。
都会では地上の星が邪魔をするからだ。
だか、そんなものよりも
何だか心惹かれた。
少し上をみる。
月が見えた。
今日は満月みたいだ。
手を伸ばす。やはり、届かない。
初秋の星月夜は
私には眩し過ぎたようだ。
嬉しいとか、悲しいとか、そういう感情はなかった。
ただ、もう少しだけこの夜に染まっていたかった。
7/16/2024, 11:39:54 AM