お腹をこわしたらしいや。
トイレにこもって、気ぞらしにペーパーの切れ端を握った。
痛みがちょっとマシになった時なんかは、とっても綺麗に畳んだり、暇つぶしに使えるので、長くトイレにこもる時、僕はペーパーを握る。
5分、便座から離れていない。
「また痛いの?」
母さんがトイレのドア越しに聞いて、僕はうんと答えた。
僕のお腹はハンバーガー一個食べたくらいでピーピーなる弱虫なので、そこまで珍しいことではない。母さんもそんなに心配してなかった。
しかし、今年も終わりに近づいていた頃、便座に血がついた。
一年検査して、出た病名は潰瘍性大腸炎。
僕くらいの歳には多く見られる病気だそうだ。
僕はそこまで悲観していなかったが、医者から言われた、「マーガリンとか、油の多いものは避けるように」これが大問題である。
僕は油ののった食べ物が大好物なのだ。たべる度お腹はこわすが、食べている時の時間は至福以外のなにものでもない。
焼肉なんかで度々見かける、あの油の塊とか、天ぷら、さつまいもの揚げ物、揚げ物となったら欠かせない、肉汁たっぷりの唐揚げ……とにかく油の多い食べ物が大好きだった。
最後に食べたい。これが人生最後でもいい!
僕が押した呼び出しベルの音を、しっかり聞き留めた。
12/21/2023, 4:37:08 AM