蓼 つづみ

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名は、誰にとっても人生最初の贈り物であり、
しかも本人は自ら選ばないという、
きわめて特異な贈与でもある。

“名”という贈り物に、中身があるのか――
それを考えるには、
名を「箱」として見るか、
「器」として見るかで景色が変わる。

もし名を“箱”とみなすなら、
中身は後から入ってくる。
その人の行い、声、癖、願い、涙、ささやかな選択――
そういう生の細片が、時の流れとともに箱の内側に沈殿していく。
つまり、名は最初は空だ。
空だからこそ、持ち主の生を受け入れられる。

もし名を“器”とみなすなら、
中身はすでにある。
名に含まれる音の響き、歴史、字形、
それらすべてが、名そのものに初期値として宿っている。
持ち主はその器に自分の生を注ぎ、形をゆっくり変えていく。

だからその贈り物の中身は、
空でもあり、満ちてもいる。

題 贈り物の中身

12/2/2025, 1:45:09 PM