光輝いて見えるような人はたまにいる。聖人みたいな存在。
「お前はほんとに光ってんだもんな」
「む」
隣でラーメンを啜る友人が顔を向ける。その顔は逆光で見えづらいが、どんな表情をしているかは何となく読みとれた。
「いやそれねー初対面の人とかなかなか信じてくれないけど」
彼はセルフで逆光状態になる人間だった。背後から常に謎の光が出ている。おかげで俺は10年間この男の顔つきを知らないままだ。
「不便なこともあるけど夜道とか明るいし便利っちゃ便利よ。……ふかいかたってひゅうのあね」
「食いながら喋んな。あ、すみません替え玉お願いします」
映画館に行くときは黒い服装でパーカーのフードを被って鑑賞したり、クリスマスシーズンに駅前のイルミネーションに紛れたり難儀なことが多そうだが持ち前のポジティブで上手く生活しているようだ。
「でも俺、お前のそういうとこまじ尊敬してる」
「まじ?さんきゅ〜」
このあとはお互いラーメンに集中していたためまともな会話はなく、そのまま店を出た。
「ごちそうさまでしたー」
がらがらと引き戸を閉めると体がすぐに外の冷気に包まれた。白い息が呼吸と合わせて立ち昇る。
「さみ」
「上着もってきてないわ」
「もう一軒行く?」
「そんな入んね。帰る」
「おー」
駅までの道のり、やつが呟いた。
「俺、今まで誰にも言ってないことがあるんだよね」
「何その入り。怖いんだけど」
内心どきりとする。深刻な相談とかされるのか。
「俺って発光してるっしょ」
「まぁ、見ての通りそうだな」
「だから喋ってる相手の顔そんなわかってないんだよね。自分の発してる光が相手照らしちゃって」
「お前もその状態なるんだ」
1/24/2024, 11:22:47 AM