冬至。

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                びーえる注意報!



隣りですやすやと眠る彼。
起きてるとすぐちょっかい出してきて暴れるから今もシャツからちらりと白いお腹がはみ出てる。
それを整え、布団を肩まで引き上げてやる。
するともぞもぞと動いて傍らに座っている俺の腰に抱きついてきた。
その髪をそっと撫でる。
こんなに君を好きになるとは思わなかったなぁ。
初めて出会った撮影読み合わせ。
度重なるキスシーンの多さに2人で目も合わせれずに居たのは始めのうちだけで。
数日もしないうちに、無邪気にふざけて絡んでくるからすぐ打ち解けた。
最初は感情表現が豊かでくるくる表情が変わって元気ですごく気が合うな、ぐらいだった。
でもその間に見せる脆さに危うさを感じて心配になったりもして。
見守ってるうちになんか段々と守りたいと思ってしまう自分が居て。
気付くとずっと姿を追ってた。宝物のように優しく優しくしてあげたいと知らずに接してしまってた。
周りにもあからさまに分かるように。
でも撮影では恋人になるとは言え、現実では同性同士だし冗談混じりに口説いてみても笑って否定されてたからそれが叶うとは夢にも思っていなかった。
それでも撮影で交わす熱い抱擁と口付け、甘い言葉で偽りの愛を紡ぐ。
「本当に君は男を愛せないの?」
「一秒でも俺のこと好きだと思ったりしなかった?」
「俺はすごくお前と寝たいんだ」
そこにこっそり本音を混ぜて。
「本気で言ってるんだよ」
目の前で揺れる瞳。困ったように笑う。
想いが溢れて止まらなくて。役に感情を乗っ取られてたかもしれないけど。
日に日に想いは膨れていくばかりで。
毎日のように交わす口付け絡む視線境界線もなく抱き合う。
見つめるだけで甘い空気をまとってしまう俺らに何度も指導が入る。まだそこは仲良くないシーンだよまだだよ。
撮影の合間の他愛もない会話やなんて事ないスキンシップ触れる指先見つめる視線にお互いに熱がこもって来てたのは気のせいじゃないよね。君も同じ気持ちで居てくれないかな。
そんな気持ちで居たある撮影の、抱きついたまま待機のその時にそっと漏らしたきみの言葉。
「この役がとても羨ましいんだ。こいつには彼が居て。最近こんな考えばかり浮かんでくるんだ…」
「ねぇ僕はどうしたらいい?教えてよ」
台詞にはない言葉。それってつまり…そんなまさかまさか。
動揺して信じられなかった。
君も同じ気持ちで居てくれるの?
「あとでホテルで話そ」
その後の撮影はよく覚えてない。

そっとそっと髪を撫でる。
君はくすぐったそうに身をよじる。
「まさかこうして一緒に居られるなんて夢みたいだな」
あの先隣りにいる未来なんて絶対無理だと思ってた。
きっと叶わないと。錯覚だと。
あの激しく甘く過ごした夏を過ぎても俺らの想いは覚めなくて今もこうしてここにいる。
ただただそばに居て笑って。
君が幸せでいればいいと願うよ。
そしてその側でずっと見守りたい。



                (君と紡ぐ物語)

12/1/2025, 9:59:22 AM