時間の感じ方は人それぞれだ
1年をアッと言う間と感じる人もいれば、ようやく1年と感じる人もいるだろう
「1年後なんて、僕のように余命半年と宣言された人間にとっては、おそらく訪れることの無い未来だ
もちろん、医学的に説明出来ない奇跡だってあるから、もしかしたら訪れるかも知れないけどね
でも、だからと言って、自分が不幸だとは思わない
余命宣告を受けて入来、まさに1秒1秒がしっかり感じられるんだよ
それだけじゃない 鳥のさえずりひとつだって、雨音ひとつだって愛おしくてたまらないんだ
かつて、元気だった頃は1日がアツと言う間だったし、生きている実感なんて感じたことあまり無かったよ
それが今は、良い意味で『一日千秋』の思いなんだよ
その一時一時が輝いて見えるから1日がとても長く充実しているんだ
あと僅かしか生きられないことに悔いがないと言ったら嘘になるけど、こんな状況になって初めて『生きてる』ことを実感しているよ
こんな風に思える時間も正直あと僅かだろうと思う そのうち思考力も無くなるのだろうからね……
だから、この僕からのメッセージを読んでくれた人がひとりでも多く、生きることを実感しながら1年後に今よりも幸せに生きていて欲しいと心から思うよ」
直之は新聞を閉じ、妻に声をかけた
「君は今朝の新聞のこの記事を読んだかい?
ちょっと読んでみると良いよ
そうだよな… 当たり前じゃないんだよな…」
『1年後』
6/25/2024, 5:34:15 AM