飛べ
飛行機が離陸する瞬間
壊れるんじゃないかというくらい大きくて重たい機体がゴトゴトガタガタと走りだし、飛べ、というより、飛ぶ!という緊迫感がやってくる。
体がふわっと浮いて、車輪が地面を蹴ったのを感じる。
エンジンのゴオオオオオオというエネルギーを感じながら、真っ直ぐに天に向かって上昇していく。
窓の奥に小さくなっていく町並みを見つめながら、このエネルギーが事切れないことを私は強く祈る。
今、エンジンが止まったら鼻先から真っ逆さまだ。
そんな想像を常にシュミレーションしながら、前のシートの背を手のひらで力強く掴む。
飛べ!飛べ!と祈りながら。
毎度、飛行機から降りると手が痺れている。
ジェットコースターを降りたあとも手が痺れる。
こういうのはジェットコースター症候群とでも言うのかと不思議に思って調べてみたら、
ただ単にシートを握りしめる手に力を入れすぎて、血流が悪くなっただけらしい。
シートを強く握りしめたところで、落ちるときは落ちるのに。
世の中に100%はないと知っているから。
身を委ねる相手を自分以外に置くことは恐怖である。
では、自分になら身を委ねられるのか?
私たちは自分たちの能力で支えあって、生きている。
だから、私も誰かから身を委ねられているのかもしれない。
みな、誰かの命を抱えながら飛んでいる。
落ちないように、落とさないように、
飛べ!
7/19/2025, 1:44:02 PM